モニター募集した「Safie Pocket2」 実際に使ってみた感想は?

株式会社 一建社

代表取締役
JACCA耐震施工技術者
JACCA天井耐震診断士

廣江 一 氏

カメラ天井耐震診断士現場作業

100件を超える天井耐震診断のキャリアをもち、高い技術力と豊富な知識で大手ゼネコンからも信頼を得る株式会社一建社の廣江 一さん。今回は、セーフィー株式会社のウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」のモニター募集にご応募いただき、約1カ月にわたり実際に現場で使用してもらった。その感想やご意見を伺うとともに、JACCA耐震天井診断士としての仕事についても詳しくお話を伺った。

リアルタイム映像を見ながら
遠隔地で現場の状況を確認

セーフィー社の「Safie Pocket2」は、体に身につけて使える小型カメラ。撮影した映像をリアルタイムで送信し、遠隔地で確認したり、クラウドに保存したりできる。一建社さんがモニターに応募された理由は何だったのだろうか。

「もともとウェアラブルカメラに興味がありました。現場で職人が『ここはどうすればいいのだろう』と迷うことがあるのですが、そういう時に現場管理者が現地にいなくても、カメラに映った映像を見ながら指示なりアドバイスなりができればと思いました。
また、現場の進捗状況だけでも確認できれば、『これなら工程に間に合うな』とか『少し人を入れないといけないな』といった判断ができます。いくつも現場を抱えている時など、移動せずに確認できると非常に助かります」

Safie Pocket2

 

モニター期間の約1カ月、実際に使われたのはどんな現場で、どんな状況だったのだろうか。また、使ってみた率直な感想はいかがだろうか。

「あるオフィスの改修工事の現場で使いました。先ほどお話ししたように、職人のわからないこと、判断に迷うことがあった時に『Safie Pocket2』で現場の状況を映してもらう形です。職人がカメラを身につけて現場の状況を共有し、私は事務所で映像を通して確認しました。映像もきれいですし、カメラ自体もすごく小さくて使いやすかったですね。
ただ、確かに役に立つとは思いましたが、やはりたくさんの現場を抱えていることで、より効果を発揮するかもしれません。ですから工事店さんが導入するというより、例えばゼネコンさんが導入し、各現場の監督さんが持つ。そして監督さんが、塗装屋さんや解体屋さんといった各業者に『ここをこうしたいけど、できる?』などと現場の状況を確認するために映像を送る。そんな使い方がいいのかもしれません。
それから、ほとんどの工事現場にはWi-Fiなどの通信環境がありません。その場合、何らかの通信手段を用意する必要が出てきますね。地下の現場だと、スマホの電波も入らないようなことがありますから。そのあたりは今後の課題かもしれません」

 

「Safie Pocket2」のもうひとつの特徴である、撮った映像をクラウドに保存し、いつでも見ることができるという機能については、何か活用方法があるだろうか。

「今は動画サイトなどで、基本的な作業についてはいくらでも映像が見られます。ただ、なぜそうしなければいけないのか、といった細かいものはありません。例えば、厨房などに『ふかし壁』を作って倉庫にしたいという時に、素地貼りの場合、ボードの目地が見えてしまうことがあります。厨房は床が斜めになっていますから、上の目地がズレてしまうんですね。でも、下を床なりに少し削ることで、真っ直ぐに貼ることができます。ベテランの職人さんは、こちらが指示しなくてもそうした処理をしてくれます。
若い職人さんが知りたいのは、そうした細かい部分だと思うんです。匠の技をカメラで映しておいて、学校のようなところの教材にすることも可能かもしれません。『なぜそうするのか』というものをたくさん残しておけば、技術の継承にも繋がります。建設業界で働く外国人も増えていますが、日本に来る前に受ける研修などで、もう少し細かい知識を提供してあげると、技術の向上に繋がるはずです。
日本人は、すでにあるモノを洗練させる技に長けています。クルマにしてもそうですよね。人材不足などで、そうした職人技が消えていくのは非常に残念です。こうした問題にも、「Safie Pocket2」のような最新技術を活用できたらいいなと思います」

JACCA天井耐震診断士の講習を
受けていた矢先の大震災

天井耐震診断士としても豊富な実績がある廣江さん。診断士の資格はいつ、どういった経緯で取得したのだろうか。

「JACCAさんからの勧めがあり、まずJACCA耐震施工技術者の資格を2010年の12月に取得しました。その後、翌年の4月にJACCA天井耐震診断士の資格を取得しています。講習に通っていた矢先に東日本大震災があり、ニュースなどで天井の崩壊を目の当たりにしました。本当に耐震天井の必要性を実感しましたね。
あの頃は診断や施工の依頼も非常に多かったです。一番早く依頼が来たのが、ある企業が横浜で借りているオフィスビルでした。すぐさま補強してほしいということで、5月には施工しました。JACCA耐震施工技術者の資格が生きましたね」

天井の診断を行う際に、廣江さんが大事にしていることは何だろうか。

施工の順序通りに調査をしていくことです。施工の通りに見ていけば、見落としがありませんから。報告書を書く上では、部材の種類、寸法やピッチを正確に把握しておくことが重要だと思います。
また、JACCAで行われる定期的な講習会には必ず参加しています。次々に新しいものが出てきますから、対応するには講習会に出て、最新の情報をきちんと理解しておく必要があります」

 

数多くの天井を診断してきた中で、印象に残っているのはどんなことだろうか。また、現場でとくに苦労することや、独自の工夫などを教えていただきたい。

「一番大変だったのは、ある複合商業施設の案件ですね。ホテルからオフィスビルまで、10くらいの建物をすべて診断しました。数日かけて夜間に行うのですが、その時にちょうど弊社が夜間工事をやっていまして、もちろん昼間の工事もありますし、一体どうなっちゃうのかと思いました。でも、やればできるものですね。
天井の診断はふつう点検口から行うのですが、本来は空調設備などのメンテナンス用なので、天井全体を見回すことができないケースもかなり多いんです。これは苦労しますね。体を無理やり入れて、なるべく見える場所を探しますが、それでもダメなら別の点検口から見て……ということで何とかやっています。
それから、天井裏で写真を撮るのが想像以上に難しい。とくに難しいのが、あえて真っ黒に塗装してある天井ですね。ホコリに照明が当たって、星のように写ってしまうんです。写真の専門書を2冊買って勉強しましたが、私のような素人にはちょっと対処が難しいです。
また、照明の当て方によって、うまく写ったり写らなかったりします。片手にカメラ、もう片手にライトを持って、うまく撮れる角度を探して……というのが結構大変ですね。適当に撮れば早く終わるのですが、どうしても時間がかかってしまいます。
私は診断士の中で最も診断に時間がかかるらしいのですが、報告書の写真が一番きれいだとも言っていただきます。たとえ時間がかかっても、何のための報告書なのかを考えると、きちんと伝わる写真を撮りたいと考えています。また、枚数も撮っていますので、後で何かあった場合、『その部分の写真もありますよ』と提供することができます」

資格取得のメリットと
日本の天井耐震化の現状。

廣江さんが診断士の資格を取って、よかったと思うことは何だろうか。

診断業務が施工の仕事に繋がることが、時々あります。お施主さんがJACCAさんに調査を依頼し、たまたまそれを私が担当する。その報告書を見て、天井を補強した方がいいとご判断されたということで、工事のお電話を直接いただいたケースもあります。そういうことを含めて、やはり診断士の資格を取ってよかったと思います。
また、私たちは建築基準法に則って仕事をするわけですが、診断業務に携わることで、ゼネコンさんなどにより深く、幅広いご提案ができるようになったと思います。弊社からの提案で、耐震天井工事をやらせていただいた例もあります。
私の場合は施工と診断、両方の資格を持っているということで、お取引先からは耐震天井の専門家という風に見ていただけるのかなと思います。弊社には職人が10人いますが、誰がどの現場に行ってもいいように、全員がJACCA耐震施工技術者の資格を持っています」

 

専門家の視点から、日本の天井耐震化の現状をどう見ているのだろうか。

「耐震天井の仕事をしていると、今のままで本当に大丈夫なのかなと思うこともありますね。これまでも大きな地震はありましたが、どうしても忘れ去られてしまう部分があるように思います。これだけ大規模地震が起きると言われていますから、やはり心配ですね。
現状は、かろうじて間仕切りで天井を保っているような物件も多いです。都心の大きなオフィスになれば、1000平米の広さで間仕切りすらないケースもザラにあります。きちんと手を打たないと、本当に危険だと思いますね」

取材協力

株式会社 一建社

2002年に設立。東京都江東区を拠点に、軽鉄ボードの施工をはじめとした内装工事業を営む。確かな技術と変化を恐れない姿勢、最新の建材への深い理解で、安心・安全な天井施工を実践している。天井耐震診断の実績も豊富。

廣江 一 氏

代表取締役
JACCA耐震施工技術者
JACCA天井耐震診断士

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