内装工事店の財務や事業承継の課題を解決する新しい仕組み

株式会社桐井製作所 K-Channel

下尾 勝美氏

事業承継内装業界経営サポート

内装下地材メーカー「桐井製作所」の顧客支援サービスとして、2020年末にスタートした「K-Channel」。コンサルティング会社「シードコンサルティング」と業務提携し、財務改善や事業承継といった経営課題に関するセミナーを、毎月1回開催している。その運営に携わる桐井製作所の下尾勝美さん、新川萌果さんにお話を伺った。

左:新川萌果さん 右:下尾勝美さん

コロナ禍で苦しむ中小の内装工事店

約2年にわたるコロナ禍で、財務状況の課題を抱えた内装工事店も少なくないだろう。さらに人手不足やデジタル化といった多くの課題を抱えるなか、業界全体として生き残りを図っていかなければならない時代といえる。「K-Channel」の発起人である下尾さんも、そうした問題意識が根底にあった。

「建設業における倒産や廃業といった状況がメディアで伝えられるなかで、果たしてこのままでいいのかというのがスタートです。メーカーである我々としても、これまでのようにモノを売って終わりということではなく、もっと何かできることがあるのではないかということですね。『ConTech LAB(過去記事)』もそうですが、もともとお客様の課題をしっかり解決していこうという意識があり、同じ気持ちで『K-Channel』を始めました」

中小の内装工事店などでは、実際にどんなことが課題になっているのだろうか。

「たとえば、後継者が決まらず、メインバンクから融資を断られて倒産といったケースをよく聞きます。私も銀行の方と面談して事情を聞いたことがありますが、やはり『後継者がいないとダメですよ』と、はっきり言われました。現在の問題となっているのは、こうした後継者問題もありますが、もっと全般的なものですね。財務の問題もあれば、採用の問題、社員の定着化の問題、社員教育、人事評価の問題などですね。それとよく言われるのは、長時間労働や生産性の改善、IT化の遅れといった部分。あとは経営者の方の財務知識の問題もありますね。そういったところが課題として出てきています」

経営課題に切りこむセミナーを開催

そうした課題に対して、「K-Channel」の活動内容は?

2020年12月から毎月1回、オンラインのセミナーを開催しています。1回目から4回目までは東京と北関東の支店(の顧客企業)を対象に、ちょうどコロナ禍ということもあり、資金調達のための助成金・補助金をテーマにしました。5回目からは全国に展開していき、これも資金調達と、あとはM&A、決算書の見方、事業承継をテーマにしました。今後は人材の採用や育成、福利厚生などをテーマにしたセミナーも考えています。来年も補助金などの状況が変わってくると思うので、良いタイミングでホットなテーマを取り上げていきたいですね。セミナーにはこれまでトータル393社にご参加いただき、そのうち20社ほどが『シードコンサルティング』との個別面談にまで進んでいます」

セミナー参加者の反応はどうだろうか。

「とくに好評だったのが、決算書、財務諸表の見方というテーマですね。ほとんどの内装工事店さんは、財務に関して税理士さんに頼りきっている状況だと思います。ただ、税理士は税金の専門家であって、経営の専門家ではありません。経営者の方が税理士さんの話をしっかり理解して、ご自身で判断ができるように、必要なお話をさせていただいています。皆さん『自分で頑張りたい』という気持ちはあるんです。でも、誰にも聞けないというケースが多いのだと思います。そういう意味で、当社が窓口になることにより、より相談しやすくなる面はあるのではないでしょうか。実際に『会社を売りたい』というお客様もいらっしゃって、財務内容は非常に悪かったのですが、優秀な職人がいるということでM&Aが成立したケースもありました。熱心に聞いていただけるのは、地方のお客様の方が多いですね。比較的余裕のある関東圏のお客様よりも、危機意識が高いのだと思います。もちろん『シードコンサルティング』と契約していただくのも引き出しのひとつではありますが、あくまでもボールを握っているのはお客様です。私たちの活動を使うか使わないかも含め、自由に決めていただければと思っています」

対面イベントの開催も視野に入れる2年目

さまざまな課題意識はあっても、実際にどこから手をつけていいのかわからないという経営者も多いかもしれない。そうした内装工事店の窓口となりうるのが「K-Channel」といえるだろう。今後の方向性については、どうお考えなのだろうか。

「『K-Channel』がスタートして約1年ですが、やはり長く継続していくことが重要だと思います。ゆくゆくは私どものすべてのお客様にセミナーを聞いていただきたいですね。これまでずっとオンラインでやってきましたが、対面のイベントも開催できるようになると、もう少し広がっていくのかなと思います。将来的には、コンサルティング的なことまで踏みこんでいけたらという気持ちもあります。お客様に『課題は何ですか』と聞いても、実はご本人にもわからないことが多いんです。まだ実例は1件だけですが、お客様の業務フローみたいなものを作り、その中で強みと課題を小分けにしていくということを、私たちも手がけ始めてはいます。最終的にはそうしたことも行いながら、『ConTech LAB』で紹介している業務改善ツールも活用しつつ、課題の解決に繋げるご提案をしていけたらと考えています。ただ、まだまだそこまでは先が長いかなと思っています。まずは、いかに私たちのやっていることを知っていただくか。毎月1回開催しているセミナーを、できるだけ多くの方に聞いていただきたいですね。お近くの当社の営業所からすぐにご案内できますので、お気軽に問い合わせていただければと思います」

他のメーカーや商社に先駆けて、顧客企業の経営サポートに乗り出した桐井製作所の「K-Channel」。日本産業新聞に取り上げられるなど注目されているが、まだスタートして1年の取り組みだけに、今後の活動にもおおいに期待したい。

取材協力

株式会社桐井製作所 K-Channel

内装下地材メーカーの「桐井製作所」と、M&Aコンサルティング会社「シードコンサルティング」の業務提携により、2020年12月にスタートしたお客様支援サービス。現在の活動は、主に内装工事店を対象として、財務や事業継続の課題に関するセミナーを毎月1回開催している。
「K-Channel」に関するお問い合わせ:
株式会社桐井製作所 東京支店 TEL:03-3493-3062 FAX:03-3493-3061

下尾 勝美氏

新川 萌果氏

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