ウェアラブルカメラとクラウド映像データが現場を変えていく

セーフィー株式会社

第2ビジネスユニット 営業部プロダクト セールスグループ グループリーダー

高橋 健人氏

カメラ現場作業

防犯や監視を目的としたカメラはよく知られているが、このところ建設業界で注目されているのが、作業員が身につけて使うウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」だ。スイッチを入れると自動的に撮影を開始し、その映像をインターネット経由でクラウドに保存。現場の様子を遠隔地からリアルタイムで確認したり、後から振り返ったりすることも自在にできる。そんな便利な製品・サービスを提供しているセーフィー株式会社の高橋健人さんに、実際の使用例などについて詳しくお話を伺った。

シェア約半数を誇る、手軽で使いやすいサービス

まずはセーフィー社がどんな会社なのか、どんなサービスを提供しているのか、簡単に教えていただこう。

「弊社の創業は2014年。創業メンバーの3名がソニーからスピンアウトした、いわゆるベンチャー企業です。2021年9月にはマザーズに上場させていただきました。クラウドのプラットフォームを開発・運営している会社であり、カメラ自体は必ずしも弊社が作っているものではありません。既存のネットワークカメラに、弊社が開発しているファームウェアをインストールすると、カメラで撮影された映像がインターネットを通じてクラウド上にデータとして貯まります。セーフィーはその仕組みを提供する会社です。お客様がカメラを設置すると、PCやスマートフォン、タブレットからネット経由の映像を遠隔で見ることができる『クラウド録画サービス』として、現在47.5%ほどのシェアをもっています(テクノ・システム・リサーチ社調べ『ネットワークカメラのクラウド録画サービス市場調査』より)。弊社サービスの特徴は、クラウドサーバーにすべての映像を貯めているところです。従来の防犯カメラは、現地のカメラルームのようなところに行かなければ映像を見られませんでした。弊社の場合はすべてクラウドに記録され、リアルタイムでも、録画データでも、ネット経由でどこからでも簡単に見ることができます」

セーフィー社のサービスは、閲覧用の視聴ソフトをインストールする必要がなく、グーグル・クロームなど一般的なウェブブラウザで見ることができる。その点も、ユーザーから好評だという。「ブラウザからアクセスし、登録されているカメラ一覧から見たいものを選べば、過去の映像やリアルタイムの映像を見ることができます。動画だけでなく、静止画(スナップショット)の撮影も可能です。映像は特定の期間クラウド上に残り、任意の期間だけ切り出して保存することも可能です。また、ウェアラブルクラウドカメラの『Safie Pocket2』には通話機能があり、現場側と通話することもできます。ですから『もう少し右を映して』とか『この作業はどうすればいい?』といった、現場とのコミュニケーションも簡単にできるようになっています。最近のアップデートでは『Safie Pocket2』に内蔵しているGPSを活用して、グーグル・マップ上に現在位置を表示することができるようになりました」

課題やニーズに沿った多様な導入例

従来のような設置型を含め、数種類のカメラをラインナップしているセーフィー社。なかでも注目したいのが、小型で高性能なウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2」だ。実際にどんなところで使われているのだろうか。

「室内向けのカメラで最も多いのは、飲食や小売といった、もともとカメラが多く入っていた業種ですね。あるフランチャイズの焼肉店では、店舗のオペレーション改善を目的にご導入いただいています。注文から提供までの時間を本部で管理していくという観点で、決められた時間内に提供できなかったケースを元に、映像を振り返りながら問題点や改善点を抽出しています。それまではエリアマネージャーが現場を回っていましたが、店内の状況を映像で確認することができるようになりました。建設や公共の分野でいえば、「Safie Pocket2」をゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなどを中心に、幅広く使っていただいています。オフィス関係の内装工事をされている会社でも使っていただいています」

建設業では、具体的にどのような使われ方をしているのだろうか。

「ある通信建設会社の例では、各地にある基地局の工事を行っていて、それを本部で管理したいということでご導入いただきました。現在、200台ほどの『Safie Pocket2』を使っていただいています。当初は、現場の作業員が安全管理のために行っている朝礼の様子をデータ化したいというニーズがありました。マイクも付いていますので、その朝礼の様子をクラウドに貯めておきます。以前は朝礼の点検項目をタブレットで管理していて、報告書の作成に毎日1時間ほどかかっていたそうです。それを映像に切り替えることで、作業時間をゼロにすることができています。下請けの協力会社に発注するケースも多く、なかには経験の少ない方もいるということで、そういう方にこのカメラを持ってもらい、リアルタイムで作業内容を確認するということもしています。今までは新人の作業員1名にベテラン1名がついていく必要がありましたが、新人にカメラを配り、ベテランの方が本部で映像を確認できれば、1人で同時に10人を見ることも可能になります。また、ベテランの方の作業内容を録画しておき、教育用素材として残しておくことも可能です。ある大手ゼネコンでは、少し特殊な現場というか、数年に一度くらいしかない現場があるそうです。今はベテランの方がいて工事できるものの、次回は同じような工事ができるか不安だというお話がありました。そこで、カメラですべてを記録して、残しておくことにしたそうです。お客様から『こんな風に使っているよ』というお話を聞き、初めて気づくことも多々ありますね」

「他の事例では、国交省が進めている『遠隔臨場』という取り組みがあり、国が発注する道路工事、土木工事などで『Safie Pocket2』が使われるケースが増えています。新型コロナウイルスの影響もあり、実際の現場に行かずに検査を行う必要性が増しているんです。また、80万平米という広大な敷地の製鉄所では、これまで自転車に乗って、2名1組でパトロールしていたそうです。それを1名にしてカメラを持たせることで、パトロールの映像をリアルタイムで確認でき、見守りやサポートができるようにしています。この見守りという観点でいうと、内装工事店でもよくあるのですが、いわゆる安全パトロールの作業で使われるケースが多いですね。すべて録画されますので、前回の安全パトロールを見返したり、トラブルが起きた時のエビデンスにしたりもでき、ポピュラーな使われ方になっています」

サブコンの空調や内線工事で使われるケースも多いです。カメラにLEDライトが付いているので、暗いところでも撮影できます。現場では急な設計変更を迫られるケースがありますが、これまでは一度会社に持ち帰って図面を引き直すなど時間がかかりました。カメラを導入することでリアルタイムに対応でき、納期を守ることに繋がっています。また、設計変更に伴う追加精算のエビデンスとしても活用できます。こうした部分は『Safie Pocket2』ならではの魅力だと思います。もちろんスマホでも短時間の動画は撮れますが、『Safie Pocket2』の場合、電源を入れるとすべてを録画・保存することが可能です。たとえば、スマホで10分撮影すると、それだけで大変なデータ容量になってしまい、映像を共有するのは難しいですよね。我々の場合はデータ通信料も料金に含まれていますから、24時間付けっぱなしで録画することができます。あるゼネコンの方も仰っていましたが、スマホで撮影すると『歩きスマホ』になってしまうんです。足場の上などで歩きスマホをしていたら、やっぱり危ないですから」

多くの内装工事店の業務改善にも役立ちそうだが、中小規模の会社が気軽に導入することはできるのだろうか。

「現在は大手ゼネコンを中心に普及しているのは確かです。ただ、中小規模の企業でも、DXなどで業務改善を進めている会社を中心に、弊社のサービスを使っていただけるケースも増えています。価格帯として『中小企業では手が出ない』というものではありません。数万程度のイニシャルコストで始めることができ、月ごとにレンタルできますので、『今月は使わない』とか『この現場だけ使う』といったことも可能です。スモールスタートでお試しいただき、有用なら台数を増やすといったケースも実際に増えています。必要なのは我々がご提供するカメラだけで、あとはPCやタブレットなど、いつも業務で使われているものがあれば問題なく始められます」

「今までのウェアラブルクラウドカメラは基本的に買い切りで、初期投資が数十万かかり、さらに月額費用もかかりました。そういう意味で、少し手を出しにくい面があったと思います。弊社は1カ月単位のレンタルにすることでお客様の負担を抑え、まずは良さをわかっていただくという設計にしています。私たちの製品・サービスは、あくまでもツールです。それを実際にどう使って、どう課題の解決に繋げるかは、やはりお客様次第になります。ですから、私たちの側が『こう使ってください』ということを言うつもりはなく、弊社とお客様とで一緒に『何ができるのか』を考えていきたいと思います。内装工事店の皆様とも、是非ご一緒に課題解決に向けた取り組みができたらと思っています」

クラウド映像が描きだす、さまざまなシナジー

今後セーフィー社のサービスは、どのように進化・発展していくのだろうか。

「建設業界に焦点を当てると、若手の作業員の方を含めて、人材の確保が難しくなっている状況があると思います。DXの推進も課題ですが、我々としてはカメラのデータを通して、そうしたことに貢献できると考えています。今後は色々な会社から出ている施工管理アプリなどとも連携し、さまざまなシナジーを生みだしていきたいですね。また、AIと組み合わせることで、より高度な課題解決ができるようになるはずです。たとえば、映像上に立ち入り禁止区域を指定しておき、そこに人が入るとアラートが鳴るといったような仕組みです」

「さらに将来的には、『Safie App Market(セーフィー アプリ マーケット)』といったものを考えています。弊社の映像データを解析し、活用するためのアプリをさまざまな企業に作っていただき、それを提供するための場にしていきたいと思っています。たとえば、建設業界は各社で共通する課題が多いですが、ある建設会社が自社の課題を解決するためのアプリを作り、それを『Safie App Market(セーフィー アプリ マーケット)』で売り、他社も活用できるようにする。そうすることで、自社のノウハウをビジネスにすることができます。もちろん建設業界だけではなく、さまざまな業界で使っていただけるのではないかと考えています」

目指す未来 IOTエコシステムの形成

取材協力

セーフィー株式会社

2014年に創業。クラウド録画型映像プラットフォームの開発・運営を手がけ、業界シェアNo.1を誇る。

高橋 健人氏

第2ビジネスユニット 営業部プロダクト セールスグループ グループリーダー

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