建設業界のDXという高い壁に挑む意欲的なプロジェクト

株式会社桐井製作所 ConTech LAB

對馬 達朗氏

DX建設業界

新型コロナウイルスによる景気悪化や、慢性的な人手不足など、さまざまな課題を抱える建設業界。デジタル・テクノロジーによる業務変革が必須といわれるが、その道のりは決して容易ではない。そんな状況の中、2020年10月に発足したのが「ConTech LAB(コンテック・ラボ)」だ。建設業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)をサポートするため、イベントやセミナーの開催など積極的に活動している。「ConTech LAB」の運営リーダーを務める對馬(つしま)達朗さんにお話を伺った。

建設業界が直面する「3つの窮地」

内装用鋼製下地材メーカーである株式会社桐井製作所の取り組みとしてスタートし、業界の垣根を超えた活動を展開している「ConTech LAB」。どのような問題意識から、このプロジェクトを立ち上げたのだろうか。

「建設業界が直面している『3つの窮地』が立ち上げのきっかけです。1つめは、地球環境変動による自然災害の増加です。新しいテクノロジーを活用し、そこへ対応していくことが急務と考えています。2つめは、どの業界にも共通する人手不足の問題です。建設業界は人材の高齢化や人離れが顕著なうえ、世界的なコロナ禍で外国人労働者にも頼れない状況が続き、人材の流動がうまくいかなくなっています。そして3つめは、スタートアップ企業が提供する新しいテクノロジーが出てくる中で、それらを有効に活用できていない状況があります。これら3つの課題は、多くの企業が困っている部分なのではないでしょうか。桐井製作所の本業における危機感としても、業界が元気にならなければお客様が減ってしまいます。少しでもお客様を盛り上げて、業界全体が良くなっていく手助けができればと考えています」

業界を横断したセミナーを積極的に展開

コンサルティングの界隈で注目されているDXだが、その本質はデジタル技術を活用した実際的な業務変革にある。やみくもに最新テクノロジーを導入しても、業界特有の事情を考慮しなかったため失敗に終わる……というケースも少なくない。その点、建設業界の内情に精通し、幅広い業種へのネットワークをもつ「ConTech LAB」は、まさに適任といえるだろう。

「現在の主な活動は、講演やイベントの実施です。2カ月に1回ほどのペースでオンラインセミナーを開催し、スタートアップ企業や大手ゼネコン、関係省庁の方などをお招きしています。それぞれの立場から基調講演をいただき、パネルディスカッションを行うという流れが基本ですね。現在の参加者は建設関係とIT関係の方が3割くらいずつ。建設関係では工務店やハウジング、ゼネコン、専門工事店までと幅広い方にご参加いただいています。また、スタートアップのゲストをお招きしている関係もあり、不動産関係や投資家の方にも参加いただいています。そういった広がりは予想していなかったですね。セミナー後のアンケートではほとんどの方に満足いただいていますが、一方で『少し話が難しい』という声も聞かれます。そこをどうしていくかは課題ですね。また今後は、新しいビジネスモデルの開拓や、新規事業を始めたい企業とスタートアップのマッチアップといったことも手がけていきたいと考えています」

まずは業務効率化に向けた課題の認識を

中小規模の工務店や内装工事店などの場合、大規模なデジタル技術の導入は難しい。変化の波への危機意識はあっても、実際に何をすればいいのかわからないというケースも多いだろう。こうした状況に対して、「ConTech LAB」はどんなことができるのだろうか。

「始めてみて痛感したことのひとつが、スマホを含めて、業務にテクノロジーを積極的に活用している方が非常に少ないということです。スタートアップ企業が便利なアプリやツールを開発しても、かえって非効率になってしまうこともあり得ます。ただ、それはどこかの点を超えれば、きっと効率化に繋がっていくはず。もっと大きな問題は、課題が課題として認識されていなかったり、現場にデジタルアレルギーがあったりというケースです。私自身が工事店に10年いた経験から、現場の気持ちはよくわかるんです。新しく何かを取り入れるのは大変ですし、外から言われて初めてわかることも多い。デジタル技術を使った業務効率化を進める最初の一歩として、まずは課題の抽出・認識に取り組んでいただきたいと思いますし、そのためのヒントを私たちが提示していければと思います。たとえば、施工業者の方から『業務効率化を図りたい』というご相談をいただき、私たちが適切なツールをご案内するというのもひとつの形です。色々な解決策がある中のひとつがデジタル技術、そんな風に考えていただけたらと思います」

施工管理ツールの機能・サービス例

これらが全て1ツールで網羅されている訳ではなく、提供元ごとに『実装機能』『得意分野』『拡張オプション』『追加サービス』などに違いがあります。

建設業のDXという大きな課題に、真正面から取り組んでいる「ConTech LAB」。やるべきことは山積みだが、まだその仕事は始まったばかりだ。変化し続ける事業環境に対応し、力強く成長していくためのサポート役として、今後の活動にもご注目いただきたい。

取材協力

株式会社桐井製作所 ConTech LAB

2020年10月に株式会社桐井製作所によってスタート。建設業界のDXに取り組むすべての人のためのプラットフォーム/コミュニティ。

對馬 達朗氏

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