冬の現場を快適にする着心地抜群のヒートベスト

株式会社ケィ・ユーシステム

海外調達部

柏木 俊行氏

ヒートベスト現場作業

夏暑く、冬寒いのは現場の常とはいえ、やはり少しでも快適な環境で働きたいもの。電動ファン付きの服や、ヒーターを内蔵した服を導入した、あるいは導入を検討しているという会社も少なくないだろう。今回ご紹介する株式会社ケィ・ユーシステム(以下KUS)は、夏にファン付き作業服「Air Revolution」を発売、この10月にはヒートベスト「Revo Heat」を発売し、このジャンルに新規参入した。製品の特徴や参入の背景について、KUS社の柏木俊行さんにお話を伺った。

副資材卸売会社の挑戦が始まった

建設用副資材の卸売を本業としているKUS社。まずはどのような会社なのか、簡単にご説明していただこう。

「弊社はブルーシートや養生材、ゴミを捨てるガラ袋など、現場で必需品といわれるような消耗材を中心に販売している会社です。北海道から福岡まで16営業所があり、倉庫も備えていますので、そこを拠点に全国のお客様に配達しています。扱っている商品のほとんどが輸入商材で、私たちが輸入元としてオリジナル商品を販売している形になります。基本的には金物商社さんやショップさんが直接のお客様になります」

なぜ副資材の卸売会社が、空調服やヒートベストを自社開発しようと考えたのだろうか。

「お客様である金物屋さん、さらにその先のエンドユーザー様の声が大きいですね。私たちは常に、そうした情報を元に、需要があるのではないか、現場で必要になるのではないかという部分を見極めて商品開発をしています。空調服やヒートベストに関しても、すでに現場のニーズはあったのですが、基本的にはユニフォーム屋さんなどが開発したものがほとんどで、我々のように建設現場と直接の関わりをもつ業者が開発・販売しているケースはなかったんです。そうしたこともあり、より現場に近い存在として、私たちも挑戦してみようということになりました。弊社の輸入担当チームが中心となり、営業部門の声も聞きつつ、最終的に商品を仕上げていきました」

いつも取り扱っているものとは毛色の違う商品だが、そのあたりの苦労はなかったのだろうか。

「いってみれば服ですから、ノウハウや知識がまったくない状態でした。さらに電気を扱いますので、そちらもほぼ初めてといっていい状況です。まず服であること、つまりファッションですよね。そして電気を使っている部分。そういった点は非常に苦労しました。ユニフォーム屋さんなどは服を長年作っていますから、やはりファッション性の高いものを作ることができます。我々の場合、どうしても汚れが目立たないとか、そういったところに発想がいきがちなんですね。そんな中でのスタートでしたが、どうにかお客様に受け入れていただけるデザインに仕上がったと思っています。何度も試作を繰り返し、ヒートベストで約2年の開発期間がかかりました」

極薄の発熱体でスマートに温める

では、新製品であるヒートベストの特徴を教えていただこう。

「見た目としては、いわゆるユニクロなどにあるライトダウンのような感じですね。いたってシンプルです。カラーリングに関しても、ユニフォームの下に着られる仕様ということで、シンプルなブラックに仕上げています。現場では社名の入ったユニフォームを着ると思いますので、あくまでもインナーウェアである点にこだわりました。そして、発熱体が完全にジャケットから取り外せるようになっています。これは洗濯機で洗っていただけるようにですね。従来品はジャケットの中に発熱体が組みこまれているものが多く、一応洗えるのですが、洗ってしまうと消耗が激しいんです。2、3回洗ったら使えなくなったという声もありました。完全に取り外せるようにしてあれば、一般的な服と同じですから、普通に洗っていただけます。ユーザー様が建築現場の方なので、汗をかいたら洗いたいはず。そうした思いを反映させた商品です。そこが最大のポイントですね」

非常に薄いシート状の発熱体を、ボタンで服に着脱する作りになっているヒートベスト。外見上、あるいは着用時の違和感はほとんどない。

「もうひとつこだわったのは、首元を温めたいということです。首の根元まで発熱体が届くよう、服の構造を工夫しました。簡単に取り外しできて、なおかつ首元まで温まるということですね。首と背中が温まれば、体全体が暖かく感じます。よく前面に発熱体が付いているものがあるのですが、私たちは首から背中全体を温めることに特化しました。発熱体にも色々な種類があるのですが、私たちの製品は『グラフェンヒートテクノロジー』といって、紙のように薄いシート状のものが中に入っています。コード状の導線はどうしても体に当たってしまいますので、そうした違和感を取り除く意味でも、シート状の発熱体にこだわって開発しました。シートの中にグラフェン材(結晶炭素)というものが入っており、これは熱伝導率が非常に高く、さらに強度も高いのが特徴です。ケーブル状のタイプだと、何度も折り曲げると断線することがありますが、グラフェンはたとえグチャグチャに丸めても問題ありません。コード状の発熱体を使った製品は数多くありますが、グラフェンは比較的新しい技術で、薄さや耐久性などから注目され、シェアを伸ばしています」

バッテリーはどのようになっているのだろうか。

「本来は空調服とヒートベストで同じバッテリーを使えたらいいと思うのですが、空調服のバッテリーは容量が大きく、重いのがネックです。そこでヒートベストでは、もう少し小さくて軽いものにしています。空調服で300gほど、ヒートベストで180gほどですね。やはりできるだけ動きを制限したくないですから、今回は小さいものにしました。また、接続は汎用性を考えてUSBにしています。もしバッテリーが壊れたとき、弊社から買っていただくこともできますが、どこでも買える一般的なモバイルバッテリーを使っていただくことも可能です。5Vの電圧で60℃くらいに加熱し、強に設定した時で4時間弱の使用時間となっています。使い捨てカイロなどもそうですが、低温ヤケドのリスクもないわけではないので、少し熱いなと感じたら、こまめにスイッチを切っていただくことをおすすめしています」

建設現場だけでない、幅広い販路を模索

ヒートベストの発売からまだ1カ月程度だが、反響はいかがだろうか。

「北海道などはもうかなり寒いので、お客様からも『助かっているよ』といった声をいただいています。たとえば、ある足場屋さんの作業員の方からは、作業場所が基本的に屋外になるので、防寒対策に役立っているという声をいただきました。厚着しなくてすむので、仕事効率が落ちない点も評価いただいています」

空調服とヒートベストの製造・販売という、新しいビジネスに取り組んでいるKUS社。今後の見通しはいかがだろうか。

「夏の空調服、冬のヒートベストを発売し、今後は商品のブラッシュアップ、より現場の声を反映した商品にしていくことが重要です。ヒート関連でいうと、ズボン、ソックス、靴にいたるまで製品化は可能ですので、現場の方のご意見を聞きながら、開発の機会を見極めていきたいと考えています。空調服やヒートベストに関しては、まだまだ道半ばという感じで、販売の方を頑張っていかなければならないですね。もともとのお取引先だけではなく、ユニフォーム店さん、キャンプ用品を取り扱う店、釣り道具店、バイクショップといった、今までにはないルートも開拓しようと考えています。とはいえ、そう簡単にはいきませんので、今は各方面と信頼関係を構築するべく試行錯誤している状況ですね。もちろん多くのマーケットシェアを取りたいですが、まずは我々のメインのお客様であるプロの職人さんたちに、『ヒートベストはKUSのものでいい』と言われるくらいにしていきたいと思います。内装工事店さんや工務店さんに関しても、必ず弊社の副資材をお使いになると思いますので、まずはお気軽にご連絡いただければと思います。フットワークは軽いですから、すぐにヒートベストを持って飛んでいきます」

グラフェン材を使ったヒートベストは、非常に軽い着心地で、見た目もスッキリとしている。シャツと上着の間に挟むだけで、冬の現場作業が格段に快適になるはずだ。また、釣りやバイクが趣味の方にとっても、持っていて損のない製品といえそうだ。

取材協力

株式会社ケィ・ユーシステム

1994年設立。建設副資材の卸販売会社として、全国に営業所を展開。オリジナル商品として、ファン付き作業服「Air Revolution」、発熱体付きヒートベスト「Revo Heat」を開発した。

柏木 俊行氏

海外調達部

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